“睡眠時無呼吸症”といっても一般の方にはピンとこないと思います。しかし、ベッドを共にするパートナー(夫、妻、恋人など)が夜寝ているとよく息が止まっている、いびきがひどく呼吸が苦しそう、あるいは、日中いつもウトウトしている、居眠り運転をよくしている・・・といえば当てはまる方も多いのではないでしょうか。
かつては、旅行などで大部屋に泊まると必ずいびきのひどい人がいて、顔に落書きをされたり、うるさいと言って蹴飛ばされたりしていた時代がありましたが、最近ではこれが“睡眠時無呼吸症”という疾患によるものであることが明らかになってきました。
ここでは特に閉塞型睡眠時無呼吸症について説明をします。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome 以下SAS)とは、10秒以上続く無呼吸(睡眠中に呼吸が止まる状態)が1時間の睡眠で5回以上、または7時間の睡眠で30回以上おこる場合をいいます。
SASの患者さんは、睡眠中に呼吸の停止した状態が断続的に繰り返されるため十分な睡眠がとれず、日中の眠気、集中力の低下、居眠り運転による大事故などをおこす危険性が高く、さらに体内の酸素不足は循環器系に影響を及ぼし、不整脈、二次性高血圧、心不全などをきたし、時には突然死に結びつくといった問題があります。
厚生労働省の調査によれば、睡眠1時間あたりの無呼吸低呼吸数が20回以上の場合、5年後の死亡率は実に16%にものぼるとの報告があります。
日中の眠気の程度、いびきの有無、耳鼻咽喉科学的疾患や既往歴の有無、生活習慣、身長,体重などに関してお聞きします。昼間の眠気の評価にはEpworthの眠気テスト(ESS)が用いられます。また、肥満の著明な方には専門家による個々にあわせた栄養指導も行います。
1泊2日で入院して頂き、睡眠時のモニターをとる検査です。顔や体にセンサーを装着し、睡眠の深さ、いびきや無呼吸の程度、体の動きなどが測定できます。
以上のことより総合してSASの診断をします。
閉塞型睡眠時無呼吸症(OSAS)と診断された場合、専用のマスクを鼻に装着して陽圧をかけ、気道(呼吸の通り道)の閉塞を防ぎます。
鼻詰まりが原因の場合には、下鼻甲介粘膜焼灼術(鼻の粘膜を焼く治療)や鼻中隔矯正術(鼻の曲がった壁をまっすぐにする手術)、下鼻甲介切除術(鼻の粘膜を切り取る手術)などがあります。また、口蓋扁桃や,アデノイドが大きい場合には扁桃摘出やアデノイド切除術を行い,さらにのどのスペースが狭い場合には口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)というのどを広げる手術を行う場合もあります。しかし最近ではUPPPによるSASの改善率は30〜40%とやや低いという報告があります。
SASは近年社会問題化されています。1993年に米国で“Wake up America”という警告書が提出されました。これによるとスリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故、スペースシャトルチャレンジャー号事故などがSASによる重大事故として取り上げられています。日本でも、山陽新幹線の運転士が居眠り運転をして停車駅を通り過ぎてしまった事故や、あろうことか地裁判事が公判の際に居眠りをしていたという報告もされています。
SASは肥満を伴う中年に多い疾患です。日本では男性の約6割がいびきをかいておりそのうちの15%にSASの疑いがあるといわれています。さらに、何らかの睡眠障害者は1000万人近くいるといわれており、そのうち10〜20%がSASであると考えられております。食生活の欧米化、ライフスタイルの変化などにより、今後SASの患者さんはますます増加するでしょう。
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